健康診断と項目K E N K O U SINDAN
一般健康診断
既往歴、業務歴の調査
自覚症状、他覚症状の有無の検査
身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
胸部エックス線検査、喀痰検査
血圧の測定
貧血検査
肝機能検査
血中脂質検査
血糖検査
尿検査
心電図検査
一般健康診断に含まれるのは、以下の健康診断である。
雇入時健康診断
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、一般項について医師による健康診断を行わなければならない
定期健康診断
事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、一般項目について医師による健康診断を行わなければならない。
以下の場合は、該当する検査項目を省略できる。
20歳以上の者については、身長の検査を省略できる。
40歳未満の者(35歳の者を除く)、妊娠中の女性等で腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者、BMIが所定値未満の者については、腹囲の検査を省略できる。
40歳未満の者(35歳の者を除く)については、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査及び心電図検査を省略できる。
40歳未満の者(20歳、25歳、30歳及び35歳の者を除く。以下同じ。)で、以下のいずれにも該当しないものについては、医師が必要でないと認めるときは、胸部エックス線検査を省略することができる(平成22.1.25厚労告25号)。また、胸部エックス線検査を省略できるものについては、医師が必要でないと認めるときは、喀痰検査を省略することができる。
特定業務従事者の健康診断
事業者は、特定業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6ヶ月以内ごとに1回、定期に、一般項目について医師による健康診断を行わなければならない。
海外派遣労働者の健康診断
事業者は、労働者を本邦外の地域に6ヶ月以上派遣しようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、一般項目及び以下の項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。事業者は、本邦外の地域に6ヶ月以上派遣した労働者を本邦の地域内における業務に就かせるとき(一時的に就かせるときを除く。)は、当該労働者に対し、一般項目及び以下の項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。
その他の問題点
定期健康診断の検査方法は、簡単、迅速を主旨としているので、健康状態の判定の目的に対して最良のものとは限らない。例えば、糖尿病の検査としては、定期健康診断等の項目である尿糖検査よりも、血糖検査の方が精度等の点で優れているとされる。
大量の受診者に対応するので、場合によっては検査の精度が劣ったり、疾病を見落とす危険性が指摘されている。また、検査項目によっては受診しなかったり、受診頻度が少ないために、疾病の早期発見ができず、疾病が悪化してしまう危険性も指摘されている。
健康診断は単にその検査日のデータを拾い出したに過ぎません、その結果は単なるデータであり、そのデータが適正範囲だからといって安心することはできません
健康診断いわゆる「健診」は、過去からのデータの経時変化を捉えて、どのように変化しつつあるのかを見極めることが重要です
例えば血液検査の数値などは、適正範囲といわれる範囲に治まっていれば安心なのではなく、適正範囲の中でも下限値付近で安定しているのか、もしくは中間値や上限値付近での安定なのかで判断することが必要でしょう、逆に適正範囲の中に入っていても、数年で下限値付近から上限値付近に変化している場合などは、今回の数値では正常でも、本人にとってはなにかよくない変化が置きつつあるのかもしれないと判断するべきでしょう
よく似た言葉で「検診」というものがありますが、これは自覚症状がなくとも特定の病気に対して「病気か病気でないか」を調べる検査です
集団検診ではがん検診などがありますが、その集団検診の結果なんらかの異常があれば病院検診を受診して必要に応じて治療を行うものですね、健康診断は検診とは違いますので、あくまで自分の身体の経年変化を知ることにより、健康状態を維持するための定期的なチェックとお考えください
結果、項目
皆さん健康診断は会社などで年に1回受けていると思います。
どんな病気が隠れている可能性があるのかは書いていません。
健康診断の簡単な見方をお教えします。
血圧・・・130/80以下を正常とし、130〜140/80〜90を正常高値といいます。140/90以上になると高値となり、高血圧の診断です。緊張して血圧が高くなる人がいます。その人は普段は血圧が高いわけではないですので、治療は必要ありません。家に血圧計を買い測ってみるしかありません。家で測っても高いという方は本当に高血圧であるということになります。まず行う治療は食事療法、運動療法でしょう。塩分を控えたり週に2回1時間以上の運動などを勧められると思います。それでも高い場合には降圧剤(CaブロッカーやACEI、ARB、利尿剤など)を内服することになります。
血液検査・・・項目ごとに意味がありますし、健康診断によって項目自体も変わる可能性があるので代表的なものを項目別に説明します。
・総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)
血中のたんぱく質の量です。アルブミンとは代表的なたんぱく質です。この項目は体の中の栄養状態を評価しています。だからといって食べ過ぎても高値になることはまれですし、ちょっと食べてないからといって急激に下がるものでもありません。肝硬変や低栄養で低下してきます。また、以上に高い場合には血液系の病気の可能性もあります。
・AST(GOT)ALT(GPT)
肝臓の機能を表すものです。高値の場合には肝臓に何らかの炎症が有る可能性があります。ただし、何かしらの薬(市販の健康栄養食品含む)を内服している場合にはその薬のせいで多少の高値になる場合があります(多くの薬が肝臓で代謝されるため)。そのほかには慢性肝炎や脂肪肝、自己免疫性肝炎、急性肝炎、肝硬変、胆嚢炎等で上昇することがあります。自分の知らないうちにC型肝炎やB型肝炎に罹患している可能性もゼロではないため、この項目で引っかかり精査を勧められた場合にはちゃんと受診されてください。
・γGTP、ALP
いわゆる「胆道系酵素」といわれるものです。健診前日に飲酒した場合などにはγGTPは高値になります。それ以外で上昇する場合は胆嚢炎や胆管炎、胆石症などです。
・尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)
この数字は腎機能を表します。BUNだけが高い場合には脱水などを疑います。また、Crの値は筋肉量に関係しますので、筋肉の多い方は高めになったりします。特に筋肉が多いわけでもないのにCrが高い場合には腎機能が低下している可能性が考えられます。腎機能は薬の投与量などにも影響しますし、重症になってくると透析を考える(Cr 5.0以上など)場合もあるので、引っかかったらしっかり受診してください。数値が低い分には特に問題ありません。
・グルコース(BS)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)
ご存知の方も多いと思いますがBSとは血糖値のことです。この値 が高い場合には糖尿病の可能性があります。さらに、HbA1cが6.1以上で糖尿病は確定となります。まずは食事療法、運動療法になりますが、この時点で糖尿病性腎症(糖尿病による腎障害)や糖尿病性網膜症がある場合には運動は禁止される場合もありますので、治療方針は病院を受診して主治医の先生と決めていってください。
・ナトリウム(Na)カリウム(K)
この値に関しては多少の正常範囲内からのずれは大きな問題になりません。ただし、Kが6以上など異常に高い場合は再検査されてください。Kが高くなる一番の原因は溶血といって、採血の仕方が悪かったことが一番多いんじゃないでしょうか。ただし、本当にKが高い場合には不整脈が出る場合があるので、必ず再検査してください。
尿検査・・・こちらは簡単に書かせていただきます。
尿糖→陽性であれば糖尿病疑いです。正常であれば食後でもまず陽性になることはないです。
尿蛋白→陽性であれば腎機能が障害されている可能性があります。ただし、朝一の尿でない場合には正常でも陽性になることもあります。
尿ケトン→体が飢餓状態にある場合や糖尿病の状態悪化の前兆として陽性になることがあります。
便検査・・・これは便潜血を見るものです。大腸癌の検診になります。この検査は感度が95%程あるようで、非常に感度が高くなっています。どういうことかというと、大腸癌のある人は95%の人が陽性になる検査です。便潜血陽性は必ず病院を受診して内視鏡を受けてください。
心電図・・・異常は心房性期外収縮(APC、PAC)じゃないでしょうか。これは正常の人でもあるもので、よほど多発していない限りは問題ないといわれています。あとは引っかかったら必ず循環器内科を受診することをお勧めします。